学生は勉強を常にしなければいけない立場ですよね?しかし、学校で教わる勉強法や我流の勉強法は正しくないことが多いです。なぜなら勉強方法の勉強をしていないからです。今回紹介する本は勉強方法について研究して効率が良い勉強方法を紹介してくれています。
1冊本を読んでる時間があったら自分の勉強をしたいという人もいると思います。なので、今すぐ使える勉強法をピックアップして紹介します。
生まれつき頭の良さは決まっているのか
IQは生まれつき決まっているということを1度は聞いたことがあると思います。しかし、最近の研究からIQは年齢とともに変化することが分かっています。
平均年齢14歳のイギリス人を対象にした実験があります。33人の平均年齢14歳の生徒に知能検査を受けてもらいます。そのあとMRIによる脳計測をします。
そして4年後に同じ生徒に再び知能検査を受けてもらいます。このときの平均年齢は18歳です。
この結果4年間における言語性IQの変化は生徒によって異なっていました。その変化は±20程度でした。脳の細胞体の密度もIQの変化によって変わっていることが分かりました。動作性IQも同じような変化をしていました1)。
※簡単に説明しておくと言語性IQは「理解・計算・記憶」、動作性IQは「図形・記号」の能力のことです。
脳の細胞レベルでIQは変化するのです。自分の可能性は自分で変えることができるのです。どのような行動がIQの上昇に結び付くかはまだ明らかになっていません。
しかし、スタンフォード大学のキャロル・S・ドゥエックの「マインドセット」にも書いているように努力の過程が大切だというマインドを持つことが大切だということは明らかです。
そして、脳は大人になってからでも変化することが分かっています。平均年齢26歳の大人を対象にしたドイツの研究があります。この研究では新しいことに挑戦してもらいます。練習を開始後その練習に関係している脳の部位の体積が増加したのです2)。
何歳になっても新しいことへ挑戦する成長マインドセットを持っていればIQは上昇するのですね。
テスト前に掃除をしてしまう セルフ・ハンディキャッピングの効果
テスト前日に普段は気にならない部屋の汚さがすごい気になったり、最近読んでなかったマンガを読みだしたり、ゲームを始めたり…などなどの経験はだれしもあると思います。そして勉強は先延ばしになってしまいます。
怠け者だから勉強を先延ばしにするのでしょうか?実はそうでもないのです。人間にはやらなくてはいけないことを先延ばしにしてしまう特性があります。このことを心理学の専門用語でセルフ・ハンディキャッピングといいます。
セルフ・ハンディキャッピングによって勉強を先延ばしをしてしまうのには理由があります。勉強時間を少なくして自分にハンディキャップを与えて言い訳をできるようにするのです。
「点数が悪かったのは自分の能力が低いからではなく、掃除をしていて勉強をする時間が少なかったからだ」と考えることができます。
ではセルフ・ハンディキャッピングで成績は下がるのでしょうか?アメリカやヨーロッパで行われた研究があります。
この研究では小学生から大学生までを対象に実験を行っています。この実験の結果セルフ・ハンディキャッピングをしてしまった場合はもちろんどの学年の成績も下がりました。
特に小学生や中学生で成績が悪くなってしまっていました3)。
セルフ・ハンディキャッピングをしてしまう人はテスト結果が頭の良さを表していると考えている傾向があることが分かっています。セルフ・ハンディキャッピングをしない人はテスト結果は努力を表していると考えています。
もし、テスト前に部屋の掃除やゲームをしたくなったらテストの結果は努力次第で変えられるというふうに考えてみてください。
集中学習は効率が悪い?
「集中学習」とは十分に理解できたあとにその分野の学習を続けることのことを言います。2005年に行われた心理学の実験から「集中学習」には限界があることが分かっています。
勉強したことをすぐに復習すると勉強しすぎたことになり、結果として効率が悪くなってしまうのです。同じ分野の勉強のしすぎはよくないのです。
2005年に130名の大学生を対象に実験が行われました。集中学習するグループと集中学習しないグループに分かれました。
集中学習するグループはしないグループの4倍の練習問題を解きました。
1週間後のテストでは明らかに集中学習をしたグループの得点のほうが高かったです。しかし、3週間後のテストでは集中学習をしたグループと集中学習をしていないグループに差はありませんでした。
長く記憶をしなければいけない場合は集中学習が有効ではないことが分かりました4)。
この結果から集中学習をしたほうがすぐに忘れてしまうことが分かります。テスト期間にいっきに勉強してすぐに忘れてしまった経験あるのではないでしょうか。では最も記憶に定着する勉強方法はどのような方法なのでしょうか?それが「分散学習」です。
記憶に最も定着する復習のタイミング-分散学習-
最も効率的な復習のタイミングは
「学習してから復習するまで」:「復習してからテストを受けるまで」=1:4
ということが分かっています。
つまり、テストまで10日間あるとき10日前に勉強して2日後に勉強してテストを受けた場合が一番成績が良くなるのです。
テストまで50日あるときはまず学習して10日後に勉強すると一番成績が良くなります。
この実験では様々な国の1354名がインターネットを通して参加しました。
図の間隔2が7日と35日の2通りとしました。
間隔2が7日のグループは復習を数日以内にすると得点が高いことが分かりました。一方、間隔2が35日のグループは復習を大体10日後に行うと得点が高いことが分かりました。
そして最も成績が悪かったのは「間隔1」が「0日」のときでした。つまり、学習後すぐに復習を行う「集中学習」はどちらのグループでも意味がないことが分かりました5)。
この実験では復習からテストまでが35日のグループの人が最も復習に最適なタイミングである10日後の復習を逃して20日後に復習してもそこそこ高い得点が取れることを示しています。
このように時間を空けて学習することを「分散学習」といいます。効率的に記憶するために分散学習を使うと世界が変わります。僕も分散学習してから医学部の勉強にある程度余裕をもってついていけるようになりました。
最短で最大の効果を発揮する勉強法
結論からいうとテストを受けるだけで学力が上がることが分かっています。
テストを効率的に使うと全体の勉強時間を減らして高得点を取ることができます。
2008年にアメリカの研究グループに発表された実験を紹介します。
ここでいう再学習とはテストをしない読むだけの学習方法のことです。
実験参加者は外国語の単語とその意味を覚える学習とテストを繰り返しました。
再学習、再テストの方法を図の4グループのように分けました。(ここでいう再学習とは「読むだけの」復習方法です。)
1週間後に最終テストを行いました。
グループ1が勉強時間は最も長く得点が高くなりそうですよね?しかし、グループ1よりも勉強時間が短いにも関わらずグループ2が最も成績が良かったのです。
また、グループ2と3の勉強時間はほとんど同じだったのにも関わらずグループ2のほうが得点が2倍近く高かったのです(グループ2は8割、グループ3は4割)6)。
教科書や参考書をとりあえず読んでテストに臨んだけど思い出せなかった経験はだれしもあると思います。
テストを利用して思い出す努力をする復習が最も効率が良い学習方法なのです。この小テストを受けるだけで成績が上がる効果を「テスト効果」といいます。
覚えることと思い出すことは脳にとって違う作業なのです。
まとめ
効率の良い勉強方法を知って実践することは大切です。3年間浪人してしまいましたが効率の良い勉強方法を学習していればもう少し早く合格できたかもしれません。
努力も正しい方向にしなければ報われる可能性が低くなってしまいます。自分の勉強法が確立している人も科学的に証明されている勉強法を1度試してみてください。
参考文献
[1]Ramsden, S., Richardson, F., Josse, G. et al. Verbal and non-verbal intelligence changes in the teenage brain. Nature 479, 113–116 (2011).[2]Draganski, B., Gaser, C., Busch, V. et al. Changes in grey matter induced by training. Nature 427, 311–312 (2004).[3] Schwinger, Malte & Wirthwein, Linda & Lemmer, Gunnar & Steinmayr, Ricarda. (2014). Academic Self-Handicapping and Achievement: A Meta-Analysis. Journal of Educational Psychology. 106. 10.1037/a0035832.[4] Rohrer, Doug; Taylor, K.; Pashler, H.; Wixted, J. T.; Cepeda, N. J. (2005). “The Effect of Overlearning on Long-Term Retention”. Applied Cognitive Psychology 19 (3): 361–374.[5] Wiseheart, Melody & Vul, Edward & Rohrer, Doug & Wixted, John & Pashler, Harold. (2008). Spacing Effects in Learning A Temporal Ridgeline of Optimal Retention. Psychological science. 19. 1095-102.[6] Karpicke, Jeffrey & Roediger, Henry. (2008). The Critical Importance of Retrieval for Learning. Science (New York, N.Y.). 319. 966-8.