【書評・要約】影響力の武器-ロバート・B・チャルディーニ-

『影響力の武器』の著者は、アメリカの社会心理学者ロバート・B・チャルディーニ教授です。400以上の論文を引用して作られているこの本は、生きていくうえで知っておくべき心理学の知識がたくさん載っています。メンタリストDaiGoさんもおすすめしている本です。

しかし、400ページ以上あり、読み切るのは大変なのも事実です。そこで、サクッと読める量に要約しました。

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影響力の武器『カチッ・サー』

最初に、この本でいろいろな場面で出てくる「カチッ・サー」について説明します。

テープのボタンを「カチッ」っと押すと、「サー」とテープが回ることから「カチッ・サー」という名前がついています。つまり、ある情報に対して、よく考えないで反応してしまうことが、よくあるということです。

たとえば、テレビで医師や専門家がこの食べ物を食べると健康にいい、と言っていたとします。すると、ふだんは買わない食材をスーパーで買った、という経験を持っているひとは多いのではないでしょうか?

よく考えないで反応してしまうこの反応を「固定的動作パターン」といいます。

ここでは、人間はテープのようにある情報にふれたとき、「カチッ・サー」と反応する性質があることを覚えておいてください。

返報性

返報性とは、なにかをしてもらうと相手に返さずにはいられない気持ちになることです。誕生日にプレゼントをもらった相手には、お返しをしなければいけない気持ちになったことがあるひとも多いのではないでしょうか?

この法則を応用すると、相手にイエスと言わせることができます。最初に、確実に拒否される大きな要求をします。相手が拒否したあとに、もともと受け入れてほしかった小さな要求を提示します。すると、相手は大きな要求を引き下げてくれたことに対するお返しとして、小さな要求を受け入れてくれる確率が高くなります。

これは、「ドア・イン・ザ・フェイス(譲歩的要請法)」として知られています。

要求は、最初の大きな要求より小さければ、小さな要求でなくてもよいということが実験で確かめられています。

返報性のルールは、人間関係を豊かにし、社会にとって、とてもよいものです。しかし、これを悪用しようとする人もいます。したがって、相手からの厚意は後に返報することを心にとどめて、ありがたく受け入れる。一方、その相手の厚意が返報性のルールを使った策略だと判断したら、それ相応の対応をとり、厚意を返す必要はありません。

返報性のルールについて知り、自分を防衛することも大切です。

コミットメントと一貫性

人がいちど、決定をしたり、ある立場を表明します(コミットメント)。すると、そのコミットメントと一貫した行動をとるように、自分の内からも外からも一貫した行動をとるように圧力がかかります。

たとえば、試食を食べて、「おいしい」と言ってしまった。そのあと、買いたいと思うほどではなかったが買ってしまった。服の試着をして、「着心地がいい。気に入った。」と店員に言った。そこまでほしかったわけではなかったが買ってしまった。

このように、一度、とった立場を取り続けるように行動したことは、多くの人があると思います。

相手から、承諾を引き出すときに有用なテクニックですが、自分が一貫性の不当な影響を受けることがあることもあります。

コミットメントと一貫性について知ることで、丸め込まれそうになっているとき、一貫性を保とうとしているだけだ、と気づくことができるようになります。

社会的証明

社会的証明とは、特定の状況で、ある行動をするひとが多いほど、ひとは、それが正しいと判断することです。みんなと同じことをして、できるだけ目立たないようにしているひとは、日本人にとくに多いですよね。

一般的には、社会では、多くのひとは犯罪を犯しませんしルールも守るのでプラスに働きます。しかし、マイナスに働く状況もあります。この本で例に挙げられているのは、大勢のひとが家の中から、殺人事件を見ていたのに、だれも通報しなかった例です。

自動車の運転免許を取るときに、救急対応について学んだと思います。そのとき、一人ひとり指定して、119への連絡、AEDの確保を指示したと思います。

「だれか、救急車をよんでください。」ではだれも呼んでくれない可能性が高いのです。

これらには、理由が2つあって、1つは、助けられそうな人がほかに何人かいれば、一人ひとりの責任が少なくなるという理由から起こってしまっています。2つ目は、社会的証明の原理に基づいたものです。多くの場合、緊急事態ははっきりと分かるものではありません。その結果、多くのひとが平然とふるまい、誰も対応しないということになるのです。

社会的証明に影響されないためには、他人の明らかな間違いに敏感であること。行動の決定は周囲のひとの行動だけをもとに決めないことが大切です。

好意

僕たちが頼みごとを聞いてあげたい相手は、家族、友人、恋人などですよね。つまり、よく知っていて好意をもっている相手です。

この好意という影響をつかってギネスに載った男がいます。ジョー・ジラードという車のセールスマンです。一日に平均5台以上の乗用車とトラックを売って、大金持ちになりました。

好意を得る方法としては、外見、類似性、接触の回数などがあげられます。大学や、異国の地で自分と同じ高校や県のひとがいて、テンションが上がったことなどあると思います。

なにかを引き受けるとき、好意の悪影響を防ぐためには、相手とその要求を切り離すことが大切です。そして、相手に過度好意をもっていないかを確認する必要があります。

権威

権威の影響とは、権威をもった人からの指示には、なにも考えずにカチッ・サーと服従してしまうということです。医師から処方されたら、わざわざインターネットで作用を調べないで疑いなく薬をのみますよね。

この本では、ある実験が紹介されています。スタンレー・ミルグラム教授の実験です。この実験では、学習者と教師役がいて、学習者が質問に間違うと教師役が電気ショックを与えます。電気ショックは間違うたびに強くなっていきます。学習者が「とてもつらそうな叫び声」をあげても、教師役の実験参加者は電気ショックをやめませんでした。

じつは、実験の学習者は、役者で痛がっている演技をしていただけです。つまり、この実験では、いつまで教師役の被験者が電気ショックを与え続けるかをみていたのです。結果は、65%の被験者が一番強い450ボルトまで、電気ショックを与えました。被験者は、痛がっている学習者(犠牲者)の訴えよりも、研究者の指示を優先したのです。

権威の有害な影響から身を守るためには、「権威者が本物の専門家であるのか。」「誠実であるのか。」を確認することが必要です。

希少性

希少性は、手に入りにくくなるとそのもの、機会がより貴重なものに思えてくる影響です。期間限定の食べ物や飲み物にひかれて買ってしまったこと。数量限定、生産数が限定されているものにひかれて買ってしまったという経験はある人が多いと思います。

僕たちは手に入れやすいものより、手に入れにくいもののほうがよいものだと知っている。そして、手に入れる機会が減少するとき、僕たちは自由を失います。多くの人が自由を失うことを嫌います。

自由の減少に対する人々の反応は、心理的リアクタンス理論の中核となっています。心理的リアクタンスとは、心理学者ジャック・ブレームが提唱したものです。

この理論によれば、自由な選択が制限されたり脅かされたりすると、自由を回復しようとする欲求から、私たちはその自由を以前より強く求めるようになります。

『影響力の武器』

希少性の影響に対抗するためには、論理的に、なぜそれがほしいのかを自分に問いかけることが有効です。論理的に問いかけることによって、そのもの、機会が本当に必要なものなのか。それとも、希少性によって、欲しくなっているのかが分かります。

手っ取り早い影響力

手っ取り早い影響力とは、人がなにか決定をするとき、手に入るすべての情報を考えるわけではなく、たくさんの情報から1つの情報だけを使うことです。

なにかを決定するとき、いろいろな情報があり、考えるのがいやになったり、よく考えずに決めて失敗したなという経験は誰でも一度はあると思います。ここまでに説明した、返報性、一貫性、社会的証明、好意、権威、希少性、という要因に影響を受けて、カチッ・サーと決定してしまっていることが多いのです。

多くの場合は、この思考の近道は有利に働いています。社会的証明を例に挙げると、よい歯磨き粉を買おうとしてスーパーまで行ったときには、人気という単一の情報に頼って、試すかどうかを決める人が多いと思います。これは、おおむね正しい判断でしょう。そして、エネルギーや思考を他の大切なことに回すことができます。

手っ取り早い影響力が悪用されるときは、例えば、サクラを雇って店の前に行列を作り人気店に見せかけたり、にせのレビューをたくさん投稿したりすることです。思考の近道への信頼性をおびやかす方法で利益を搾取しようとする相手には、うまく対処するため、よく考えることが大切です。

まとめ

僕自身、『影響力の武器』を読み終えてから、いろいろ実践してみました。「返報性、コミットメントと一貫性、社会的証明、好意、権威、希少性、手っ取り早い影響力」を意識して生活することで、自分にとって本当に大切なものが見えてきたり、物欲がなくなりました。

影響力の武器は、正しく使えば、周りの人にもいい影響を与えることができる本です。心理学が好き、ふだんの生活で不要なものをよく買ってしまう、あとから考えると納得がいかないことが多い、というひとはぜひ読んでみてください。

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